海外博士課程で必要な英語力?

こんにちは、管理人のおもちです。
新学期が2月末くらいからゆるりと始まりましたが、博士課程の身としてはいつもと変わらない日々が続いています。学期中はセミナーや講座が増えるので、分野外のことも知ることができるのは楽しいです。

さて、今回は「英語力」について振り返りたいと思いました。海外の博士課程で必要な英語のレベルなど、渡航前にはあまり見聞きする機会がなかったなあと感じています。ここでは主に、スピーキングとリスニング(会話能力)についてお話しします!

博士課程ではどの程度の語学力が必要?

分野やラボによっては、海外にいてもあまり英語を話す機会がない、という方もいらっしゃると思います。また、試験などもある博士課程と研究集中のポスドクというように、立場が違えば必要なことも異なるはずですが、参考までに…

・ミーティングやカンファレンスで、カンペなしでスライドを説明できる
・研究内容についての質問を聞き取れる&答えられる
・他の人の研究内容について質問できる
・TAなどで実験を他の人に教えられる
・その他日常的な雑務をこなせる

以上が、周りの博士課程の学生の英語での会話能力だと思います。
もちろん、プレゼンスキルや専門性は語学力とは異なるところにあるのですが、如何せん日本語オンリーのネイティブ話者が直面する課題は主に英語….。基本的なスキルがあった上で、上記の英語レベルが必要だと思いました。

そもそもの渡航時の英語レベル

うろ覚えですが、確か書類上は以下の通りだったと思います。
・TOEIC 820点 (学部4年)
・IELTS 6.5 (R 7.0 L 6.0 W 6.0 S 5.5) (修士1年)

これは実生活としてどのくらいかというと、日常生活を凌ぐことは容易いけれどプレゼンなどの質疑応答は苦しい、日常会話はわかりやすいテーマならOKだが大人数でのテンポの良い会話はついていくのも難しい、というレベルです。(体感)

全く喋ることができないわけではなく、むしろ日本にいたらある程度できる方とすら思われるかもしれないレベル。そして欧州の博士課程に来るレベルの学生としては、かなり低いと言わざるを得ないレベルです….。

私の場合、リスニングとスピーキングが渡航直後から危ういことが露呈しました。
実際、渡航してすぐはかなりのミーティング・セミナーで5割〜6割しか理解できず、とりあえず1対1での日常会話はなんとかなるものの、初回のラボミーティングで爆死し、いろいろと拙かったなあと思います笑

英語レベルの変遷(1年間)

上述した英語レベルは全くもって博士課程に必要なレベルに達してはいなかったのですが、"間違いなくこの大学内で一番下"から1年経って、"今なら中の下あたりでは?"となりました。こんな感じだったなあという振り返りを含めて、変遷を書き留めました。

1ヶ月〜3ヶ月:
5割〜6割は聞き取れるものの、端々は分からない。研究内容もいまいちわからず、ラボミーティングで寝かける。一般的な日常会話は問題なし。プレゼンの質疑応答ムリ。聞かれてる内容がまず分からない。

4ヶ月〜6ヶ月:
8割程度カバーできるものの、なまりの強い英語を話す同僚の言葉は一向に聞き取れない(HelloとかNo problemくらいしかわからなかった)。日常会話も大勢での会話だと追えないこともある。研究内容がわかってきたため、専門用語含めて内容も把握しやすくなる。人並みのラボミーティングができるようになる。

7ヶ月〜9ヶ月:
会話の内容はほぼほぼわかるようになった。特徴的ななまりのある英語を初めて聞き取れるようになる。プレゼンなどは問題なくなるが、事前の入念な準備がまだまだ必要。TAなどで大勢の人に指示を出すのは無理め。

10ヶ月〜現在:
言いたいことをその場で言い返せるようになる。少人数でなら人を笑わせるまでのエピソードは語れるようになった。事前にスクリプトを用意しなくても、数回練習して初見の人にプレゼンを見せられるようになる。他分野の研究発表を見て、要約してラボメンバーに伝えられる。

・・・というレベルで生きています。とにかく問題だったリスニングとスピーキングは、毎日の同僚の会話やミーティング、試験など、場数を踏むことでどうにかして(なって)いきました。人はなんとか乗り切らなければいけない状況に追い込まれれば追い込まれるほど、成長していくものだなあ….と思いました。

英語に慣れるまでの障壁

大勢での会話がしんどい

1対1での会話は問題なくても、複数人集まると途端に会話に混ざれなくなることがよくあります。テンポについていけないためにダンマリになってしまうのはあるあるです。

2人から3人、3人から4人、というように少しずつ複数人の会話になれるように頑張っていますが、なんせまだ難しいです。振られた時に返せればいっかあ、という気持ちでのんびり生きることにしました。

同僚たちのなまりの強い英語が聞き取れない

当然、裏を返せば自分もです。

ラボが多国籍なメンバー構成なもので、アメリカ・スイス・ドイツ・オーストリア・ロシア・エジプト・インド・中国・韓国出身の同僚の、いろいろな英語が聞けます。

個人的に印象深いのは、今では一番お世話になっているエジプト人同僚の、「Do you know a password?」が「Do you know a bath salt?」に聞こえて大混乱したことです。一生忘れない気がします。

今はなんだかんだと、アメリカ人の同僚のネイティブ英語が一番わかりにくいと思うようになりました。

伝わるかどうか不安になる

8ヶ月目くらいまで、普段あまり話さない同僚や、初めて会う人などには自分の英語が伝わるか不安でした。それゆえに声が小さくなったり、早口になってしまったりと、相手からするとむしろ聞き取りづらい状況を作っていました。

同僚の1人が、ミーティングやTAの時にゆっくりかつ文法的に正確で、聞き取りやすい英語で話しているのを真似するようになってから"伝わった"という感覚がわかるようになってきました。伝えたいことをわかってもらうのがコミュニケーションだよなあ、と思った出来事です。

渡航前・渡航後に(個別で)英語の勉強をしたか?

渡航前に1ミリくらいしました。渡航後は何もしていません….。

渡航前は、博士課程の面接で英語でのプレゼンを行うために、あの時にできる限り練習しました。しかし、面接終了&内定とともに、全ての緊張の糸がとけ、英語の勉強をする気持ちでは全くなくなってしまいました。

引越しや契約書類などの事務手続きが多く、なんとなく浮き足立ってしまったのも原因です。

一応、Native Camp(リンク) という、主にスピーキングを練習するための英語学習のトライアルに申し込みましたが、トライアルだけして終わりました。

渡航後は、それこそ最初の1~2ヶ月間、何をしていいのか分からない&他の手続きで手一杯、という状態で、英語学習に割く余裕はありませんでした。さらにサマースクール学科の入学面接TAという、私にとって重過ぎる試練が次々と降り掛かり、本気で英語学習どころじゃなかった….というより毎日が英語学習でした。

ラボを退勤してからはずっと日本語だけ、という生活を続けましたが精神的にはよかったです。むしろ無理して英語学習していたら、ままならない状況に焦ったんじゃないかなあと思います。

とにかく周囲が協力的かが全て

周囲で私の(というか誰に対しても)英語力を馬鹿にしたり貶したりする人が全くいないのは大きいです。ほとんどの人が英語を母語としていないので、まあそういう時期はあるよな….みたいな感覚でいてくれているんでしょうか。

私の英語がたどたどしかろうが、教授は待って意見を聞いてくれましたし、いつでも何でも何回でも聞いてくれて良いのだ、と言ってくれて安全圏が確立されたのがよかったです。

また、私に続き1ヶ月違いでラボに入った同僚ととても仲良くなれたことで、家族のエピソードなどの話を頻繁にできるようになりました。これでだいぶ英語のアウトプットは進みました。

あとは同僚の1人が異様に日本に興味を持ってくれていて、よく時事問題などを聞かれて頑張って答えたことも力になったかと….。あとお金を巻き上げようとしてくる(冗談)同僚をうまくかわす言葉を思いつこうと脳をフル回転させたり、割とTA関連で無茶振りしてくるポスドクの人の要求に応えたり…..。

現状、英語のレベル向上に関しては環境が100%です。私の努力というよりも、純粋に環境….。

研究だけなら英語は要らない?

悩ましいのが、研究に集中するなら英語は必要ないのでは?という考えです。私としては、各々がどの立場で何を目指すかによるのではないかと思います。

というのも、正規の博士留学生に比べて交換留学生なら英語はそれほど問題ではない、というのは頷けます。研究テーマを既に練っていて、こういうステップ(実験)をこの期間でやるんだ、という道筋がわかっている&受け入れ先と共有できている状態であれば、意思疎通さえ図れれば英語はOKだと思うからです。

正規留学だとどのみち審査会(ディフェンス)で英語での口頭発表が控えているので、英語ができない、だとキツいはずです。また、研究者同士の交流も盛んなため、よく交流会やアペロに引っ張り出されますが、ここでも大勢の中でつらい時間を過ごす羽目になりかねないです。

ポスドクに関しても、私の学科だとラボの主力として、ミーティングでの発表&発言を多々求めれたり、グラントの申請をしたりと英語をとにかく使う機会が多いです。ただ、見聞きする限りでは、研究成果だけを求められる場合もあるようで、ラボや周りの方針によるのかなあという印象があります。

おわりに

自分の英語レベルの振り返りとともに、ここまでは最低でも必要だったな、というレベル感を整理できた気がします。

先にも書きましたが、海外での博士課程やポスドクは、語学力は二の次で、専門性や基本的な発表能力があって初めて成り立つと思います。けれど、やはりコミュニケーションが円滑であることに越したことはないし、情報も取れるので研究生活が楽になるのではないでしょうか。

ここではあまり書きませんでしたが、ライティングの経験値をこれから積んでいかなければなあ、と思っています。研究計画書や学会のアブストラクト、論文についてはまたいつか書き留めたいです。

それでは!