NCCR summer schoolに参加した話

2023年8月27日

こんにちは!管理人のおもちです。
8月の下旬に所属先である大学院が含まれる、“NCCR RNA&Disease"という機関のサマースクールに参加してきました。なかなか濃い体験だったので、思い出しがてら書いてみようと思います。

NCCR summer schoolとは?

NCCRはスイスのサイエンス部門の国立機関であり、長期的な科学部門のネットワークを促進して、科学の発展やスイスの経済や社会に寄与することを目的としています。正式名称は、"National Center of Competence in Research"です。

私のラボはNCCRのRNA&Diseaseの部門に所属しており、私自身、この機関が提供する博士課程募集のルートに沿ってアプライしました。

NCCRでは定期的にセミナーや講演会を催しており、今回のサマースクールも2年おきに開かれています。ポスドクや博士課程の学生が一同に介し、お互いの研究やバックグラウンドについて話し合い、またワークショップを通じて新たな学びを得る場として提供されました。

参加の経緯

サマースクールの応募締め切りを発見して、同僚に相談したのが始まりでした。コロナもあり、前回の開催から3年間ほど空いていたこともあって、同僚もその存在をすっかり忘れていたようでした。

今年のお題である、"RNA&entrepreneurship"についての興味はあまりなかったのですが、5日間を講義つきでホテルに泊まって過ごせることもあり、かなり現金な理由で参加を決めました。

参加するにあたり、書類審査があり、応募にあたってモチベーションなどを書いたものをweb上で提出しました。後から聞くと、中には落ちた人もいたらしく、真面目に書いておいてよかったです。

参加費用

スイスのホテルで5日間、3食(朝昼夜)付きで150CHFという破格の値段です。通常ならこの待遇だと1泊すら難しいです。しかも講義の合間にはCoffee timeもあり、パウンドケーキやチョコ、紅茶やコーヒー、ジュースなどもいただけます。

交通費は出ないので自腹ですが、スイスの都市から開催地までは大体50-100CHFだと思います。また、自由時間に乗ったケーブルカーは40CHFほどでした。

合計約300CHFでスイスの壮大な景色を眺めつつ、講師陣の講義を受けていろんなバックグラウンドの人と話ができるのは素晴らしかったです。

参加者

最終的な参加者はポスドクと博士課程の学生を合わせて40人ほど、講師陣は20人ほどでした。

ポスドクや博士課程の学生(または博士課程の前のお試し期間の学生)であれば、誰でも国に関係なく参加できます。そのため、ほとんどの学生がスイスから来ていたものの、中にはイギリスやアメリカの大学から来ている方もいました。

博士課程ではさまざまな国から学生が来ていることが多く、ドイツ・イタリア・オーストリア・フランス・ウクライナ・イギリス・ロシアといった近隣諸国や、中国・インド・パキスタン・マレーシアなどのアジアの国をバックグラウンドに持つ学生もいました。

ちなみに日本人は私1人でした。この手のワークショップで日本人がいない状況が初めてだったので、なかなか面白かったです。

summer school日程

基本的に8:30開始の12:00区切り、13:30開始の18:00終わりというスケジュールでした。長く感じるかと思いきや、合間合間で休憩が30分ほど挟まっていたので特に辛さを感じません。

基本的には講義が多めですが、月曜日の夜〜水曜日の夜まではワークショップも入ります。参加者が4つのグループに分けられ、そのグループであるテーマに沿ってディスカッションをし、プレゼンを作り上げます。

また、水曜日の午後は自由時間で、ハイキングへ行ったりケーブルカーで山へ登ったりしました。
夜は基本2~3人の相部屋で、それぞれ好きな時間に寝ていました。

講義

講義は1回45分で、2コマ連続で続きます。
今回のサマースクールのテーマが"RNA & Entrepreneurship"だったので、大学のラボからのスピンアウトによるベンチャー立ち上げなどが主な題目でした。

講師陣も大学からのスタートアップ設立や、知的財産権のエキスパート、商業用として使われるようになった生命現象を発見した立役者など、とっても豪華でした…。

ビジネスプランニングに関しては、学部卒業時〜修士の時に大体似たようなことをさらっていたので、知識としてはさほど大きな収穫はありませんでした。しかし、何より実際にアカデミアのキャリアと両立しながらスタートアップを運営している人などの、生の話を聞けたことが大きかったです。

チーム課題(ビジネスプランニング)

私のチームでは、"AIまたはWeb-basedのビジネスプランを考える"、というお題でした。

7人チームで誰もAI関連をやっておらず、バイオインフォマティシャンが1人だけという絶望的すぎる状況でしたが、まあなんとかなりました笑。そもそも、ほぼ1日しか時間がない中で作り上げるため、さほどのクオリティにならないのは自明です。

1チームあたり5人ほどのメンターがつくのですが、メンター内でのコンセンサスがあまり取れてないのでよく議論が勃発していたのも面白かったです。"日本だとこうはならんじゃろ…."と思いながら参加していました。

チームの中ではダントツに英語ができず、全体でも3本の指に入る英語の拙さで、何がしか意味あることを発言することに注力しました笑。

最後のプレゼンでは、リハーサル時にあまりにひどい英語を晒し、メンバーを絶望させてから本番までになんとか間に合わせ、その差分で褒められるという貴重な経験をしました。みんなスライドの説明を、TEDトークばりの話力で語るので、"あっこれはできなきゃ死ぬ"となります。

キャリア懇談会

火曜日の夜には、希望者だけのキャリア懇談会もありました。一応女性向けの会だったのですが、男性も多く参加していて驚きました。

日本のアカデミアの状況はカオスですが、スイスでもまだまだ男女の差が埋まっていないと見られているようでした。講師陣の1/3は女性で、参加者も同程度か半数が女性の状況でもまだまだだと思うものなのかと感心しました。

キャリアは十人十色のもので、働く国や自分の持つバックグラウンドによってもその考え方は大きく異なります。正解はないのですが、自分が女性であることを理由に自分の挑戦範囲を狭めず、そして他者にもその範囲を決めさせるな、というものでした。

自由時間でハイキング

水曜日の自由時間は、なぜかプレゼン発表を夜に控えたまま行われる、謎のスケジュールでした。午前中のワークショップを終え、何人かで集まって自由行動をしていました。

今回の会場は、夏にはハイキングで有名な場所であり、いくつかのハイキングコースが提示されていました。私たちはハイキングはやめにして、ケーブルカーで山頂付近まで上がってレストランでコーヒーを飲んで帰ってくるだけのお手軽プランで過ごしました笑

ワークショップのチームメンバーだけでなく、食事会場などで一緒になった人たちとよく話すようになったり、講義などが行われる会場までの行き帰りの間に仲良くなった人とおしゃべりしたりして、かなり大所帯で自由時間を過ごしたことも楽しかったです。

おわりに

まずはサマースクールをなんとか乗り越えられた自分に盛大な拍手を送りたいです笑。始まる前はどうなることかとかなり心配していました笑。

日本で3年前に参加したドイツの学生たちとのビジネスプランニングでは、そもそも聞き取れず議論すらできずに敗退したので、今回少しは議論に参加できたことが成果です。

また、4ヶ月目の終わりにして、ようやく研究室外の人との繋がりが多くできた気がしました。5日間とはいえ、さまざまなバックグラウンドを持った人と話に興じられたのはとても新鮮でした。

研究に集中しつつも、スイスでのサマースクールをはじめとして、ここに居る時にしかできないことに挑戦していきたいです〜
それではまた!