学部生の卒論プロジェクトを監督した話

こんにちは、管理人のおもちです!日本のGWに合わせて休暇をとりまして、かなり回復した今日この頃です。前回も少し触れた学部生さんの指導が大変で大変で…..。もっと前ラボや今ラボの指導教員および周りの方々に感謝しようと思いました。今回はそんな卒論プロジェクト指導を振り返ります。

現在の大学での卒論制度

こちらの大学の学部は3年で終わり、その後修士で2年、博士で3-5年です。3年の終わりに10週間の卒論プロジェクト期間があり、そこで卒論を書いて卒業していきます。卒論プロジェクトは決められた内容のものをラボ内の博士学生やポスドクに教わる形で行います。

日本だと学部4年はまるまる卒論プロジェクトに当てられるので、ラボワークや研究遂行能力のトレーニングとしては日本の制度の方がいいのかなと思います。ただ、どこでも言えるようにラボ次第なので、まるまる一年棒にふる可能性があるのも否めないです。

評価もそれほど厳しくはなく、真面目にコツコツ取り組んでいれば5.5くらいは取れる (最高評価6-最低評価1)ものです。

学部生さんのレベル

学部生さんは日本でいう大学3年生の年齢です。知識レベルとしては同じかやや劣る程度ですが、とにかくなんでも質問する傾向にあってとてもいいと思いました。もちろん答える側としては"やべ、知らん!"みたいなこともあるのですが….笑

スイスの大学進学の制度的に、コンスタントにいい成績を取り続けられるような学生が集まっているような気がします。他の大学や学部では異なるのかもしれませんが、尖った生徒は実習でもあまり見かけないです。素直に知識を吸収し、わからないことを調べ、プレゼンの能力も一定以上はあるような学生さんたちでした。

学部の講義で実習も含まれるため、ピペットの使い方やPCR、ゲル泳動のやり方などは一通り知っているという状態でした。しかしやはり実技はやっていないと忘れるもの。ピペットを壊しかけたり遠心機のバランスをとり忘れてぶん回しかけたりなど、見守っていないといけないことは多かったです。

博士学生のチューターとしての役割

学部生さんのプロジェクトは、プロポーザルの提出から卒論のリバイズまでを博士学生またはポスドクが担当します。8週間の実験期間と2週間の卒論執筆期間を併走する役割です。

ラボによっては学部生さんに独立して実験を行わせることも多いようでしたが、現在のラボではこのようにチューターをつけながら着実に教えていく方式をとっています。実験プロトコルを教えながら、なぜこの手順なのか、どうしてこの試薬を使うのか、どのように作用するのかを教えていきます。

恥ずかしながら知らないこと/わからないことは大量にあったのですが、都度都度調べながら教えていました。実験前に毎朝手順の確認や言わなければいけないポイント、英単語などを復習しまくる毎日でした。

卒論はラボワーク評価、プレゼン評価および論文評価の3つに分けられます。プレゼン・論文ともに指導教員が最終的に評価するのですが、前段階としてその訂正やコメントなどはチューターが行います。次々と飛んでくるドラフトをベネチアで修正してたのは良い思い出(?)です….。

チューターとして大変だったポイント

学部生さんの卒論プロジェクトを監督して、最も大変だったのは学部生さんの実験を導くことでした。完璧に見守っている間はよかったのですが、2-3週ほど経って私も自分の実験を並行して行い始めて見守り時間を緩めるとPCRが安定しなくなったりシーケンス結果がガタついたりという事象が発生し始めました。

学部生さんは真剣にやっているのですが、何回か行った実験だと逆に気の緩みが出てくることもあるよなと思った次第です。同僚も他の学部生さんを指導して、同じような悩みを抱えていたので共感の嵐でした。

また、今回は残念ながらプロジェクトの目的は達成できず、頑張って行った学部生さんに悲しい思いをさせてしまいました。卒論プロジェクトは必ず結果を出せつつ、実験遂行能力の養えるものにするべきだなと学びました。今朝は次の学部生さんへのプロポーザルを書いていたのですが、この反省を活かしたものになっていると思いたいです。

自信にもなったプロジェクト管理

今回が初めての卒論指導だったのですが、できることや知っていることが増えて人に伝えられるようになったことで自信になりました。学部生さんがついてきてくれるか緊張していたのですが、とにかく最後までしっかり向き合おうと踏ん張れたのが大きかったです。

学部生さんの実習指導でパニックになっていた1年半前(ティーチングアシスタントの苦難)とは比べ物にならないくらい安定しました。今でも時々専門用語がわからなくなったりするのですが、まあ調べりゃいいしな、と動じず生きることにしています。

反省点は多いのですが、自分もやったことのない実験を1から学部生さんと行ってみるというチャレンジをできたのは自分でも評価できるなと思いました。10週間という短い卒論指導のなかでも実り多い期間になりました。

学部生は修士でのラボをどう選ぶか?

プロジェクトを行う中、学部生さんに修士課程のプランについて聞きました。複数の学生さんが別大学の修士課程を目指しており、その推薦をこのラボでもらいたいとのことでした。私が指導した学部生さんは、修士課程後にラボに残ってアシスタントとしてのインターンを行える場所を探していると言っていました。

このように必ずしも同じラボに残るわけではなく、みな別のところへ行くことも多いです。学部生の受け入れは指導教員が断ることができませんが、修士課程は指導教員がOKした学生さんのみ入れます。現在いる修士学生さんは学部時代からの持ち上がりで、おそらくこれが最も楽なラボの入り方なのだと思います。

今の学部では2年一貫で同じラボに配属されます。ただ、大学によっては修士課程の間に3-4個ラボを回ってプロジェクトを行うコースのところもあり、学生さんの好奇心の方向性によってはそちらの方がいいこともあると思いました。

また、ヨーロッパの奨学金付き修士課程に興味がある方はこちら(修士からの海外進学:ヨーロッパの修士プログラム、EMJMDsとは)もご参照ください。

実はすでに在スイス2年が経過していた

驚きだったのが4月末でスイスに来てから2年が経っていたことです….。なんてこった\( ˆoˆ )/

プロジェクトはびっくりするほど進んでません!笑 指導教官からも、"学部生さんまた来るし、修論のsuperviseはやらなくてもいいのでは(訳:お前のキャパ足りてない)"と言われています。実際、一番やりたい&やらないといけない実験を半年以上先延ばしにしているので焦燥感はあります()。

まずは実験プロトコルを作るところからですかね….。来月中にはいい結果を出せるように邁進します。

それではまた!

博士課程,留学

Posted by おもち