スイスの自然科学系の博士課程 、”Life Science Zurich Graduate School”とは?−2
こんにちは、管理人のおもちです。
前回に引き続き、スイスの自然科学分野における博士課程、"Life Science Zurich Graduate School (LSZGS)“について記述します。2回目ではLSZGSの入試情報についてお話ししていきたいと思います。
私がアプライをした当初、日本語による説明が皆無でしたので情報収集に苦労しました。受験をする前に知りたかった情報をまとめましたのでご参照ください。また、海外の博士課程へのアプライを考えている方や、面接対策をしたい方にも有益かと思います。
出願要件
出願要件は主に1つだけ。
・修士号を取得していること/またはその見込みがあること
これに尽きます。
特に日本の大学院(博士前期課程/修士課程)に所属または修了している人であれば、基本的にはこの要件から外れることはないでしょう。Medical Degree (MD)を取得している人に対しては別のpathがあったり、修士号に相当する学位を持っている人については事務局への事前問い合わせが必要だったりすることがあります(参照)。
学位取得前の出願はいつから可能?
気になる点があるとすれば、学位取得前にアプライすることはどのくらい前から可能なのか?という点です。
日本の就職活動時期は他国に比べてかなり早いですし、M2の6~7月くらいには大体の学生が就活を終えることと思います。日本の博士課程に進むとなると、4-5月あたりに学振(DC1)の応募準備があり、結果は9月末にわかることになります。そして実際の博士後期課程への入学試験は2-3月ごろとなるはずです。
そんな中で博士課程進学を日本にするか海外にするか迷うと、なるべく早くアプライして合格したい!と思うものです。しかしながらLSZGSの場合、1年のうち出願できるのは7月と12月の2回のみ。7月に申し込むと早すぎる気もするし、12月だと修論ともろ被りするし…と悩みます。
私は結局、2021年7月に出願することにしました。その時点では日本の大学院の修士2年生でしたので、学位取得見込み時期(3月)よりも半年以上前でのアプライとなりました。そのため日本のシステムなどの事情を含めて事務局に問い合わせたところ、“出願は可能だが入学は修士を修了した後に許可されます"という返答でした。
他にも何らかの事情を抱えている場合や、不安なことがあったらまずは問い合わせ先に聞いてみるのが良いと思います。スイスの大学事務局は仕事が早く正確なので、きちんと対応してくれるはずです。
プログラム型の博士課程 or 個別の博士課程
LSZGSは、プログラム型の博士課程(TrackⅠ)と個別の博士課程(TrackⅡ)の2通りで応募しています。
それぞれの違いとしては、TrackⅠでは応募者がプログラムごとに絞られたあと、面接を通してPIやラボとのマッチングを行うシステムであるのに対し、TrackⅡでは学生とPIが個別に面談/面接をして受け入れが決まったあとにLSZGSへ入学を申請するというシステムなのです。
LSZGS(trackⅠ)プラットフォームを通じて博士課程の学生を募集…(中略)…競争率の高い候補者の中から選ばれた約150名がチューリッヒに招待され、研究室訪問を行います。チューリッヒに到着後、各プログラムの入学審査委員会が候補者の面接を行います。LSZGSに合格したI種候補者は、LSZGS内の18の博士課程のいずれかに参加できます。…(中有略)…LSZGSの博士課程プログラムにおいて、研究責任者の面接を受け、博士号取得を目指す学生(track II students)…
https://www.lifescience-graduateschool.uzh.ch/en/PI/recruitment.html (和訳)
つまり、PIとなる予定の教授と接点があるなどして既に受け入れの話が出ている場合はTrackⅡ、どの教授とも全く接点がなく公募されたポジションにアプライする場合はTrackⅠが良いということになります。
Track Iの応募締め切りは、毎年7月1日と12月1日です。面接は、9月上旬 (7月締切の場合)と2月上旬(12月締切の場合)の水曜日から金曜日に行われます。一方で、TrackⅡでは公式的な締め切りはないため必要な書類が揃い次第手続きを進めることができます。
私の場合はTrackⅠで出願したため、記事の内容もTrackⅠに応募した後の流れになりますのでご注意ください。
出願から合格までのステップ
上述したように、TrackⅠの締め切りは7月1日と12月1日です。日本の大学院から進学する場合、12月1日の出願だと入試と修論発表会がもろ被りになる可能性があり危険です。早めにはなってしまいますが、7月1日の出願をお勧めします。
具体的なスケジュールは以下の通りです。最初から開示されているスケジュールではないので、2021年7月出願時におけるスケジュールであることに留意してください。
7/1締め切り → (書類審査) → 7月末書類審査合格 → 8月上旬面接を希望するラボの選択
→ 8月下旬面接可能なラボの開示 → 9月上旬入学面接+ラボ面接(3日間オンラインで)
→ 直後に対面でのラボ訪問の申請 → 次週にラボ訪問可否の開示 → 9月下旬〜11月末までにラボ訪問
→ 11月30日までにラボからのJob offerとその承諾 → 内定!
TrackⅠのシステムの面白いところは、研究室をあらかじめ決めたり打診したりすることを推奨されていないこと。それでも私は書類審査の前にあるラボに打診しましたが、オンライン面接後にあっさり落とされました笑。
「公募」という形を取っている以上、ラボ側は応募者にとって魅力的な研究内容に映るように努力するし、応募者がわも自身の能力や専門性をアピールする必要があります。
それでは出願から合格までのステップを、書類提出・ラボ選択・入学面接&ラボ面接(オンラン)・対面ラボ面接の4つに分けて紹介していきます。
書類提出
書類提出は全てオンライン上で行われます。メールや郵送は受け付けられていないので注意してください。
application processのサイトからapplication toolをクリックします。そこに必要となる書類やテキストが書かれてあるので規定に沿うように入力します。
2021年7月の出願では、以下のような内容でした。
<重要な選択>
・第一希望プログラム ・第二希望プログラム
<必須の提出物>
・学士の卒業証 ・学士の成績証明書 ・修士所属の証明書 ・修士でのその時点までの成績証明書
・成績のGradeの付け方を示す書類 ・推薦状(2枚以上) ・CV
・motivationを示す文章 ・現在の研究内容のまとめ
<推奨の書類>
・TOEFL ibt や IELTSの公式証明書
・論文投稿の業績
<+α>
・成績優秀者の証明書など
motivationを示す文章や、現在の研究内容のまとめに関してはwordやPagesで1枚以内の文章に収める必要があります。アメリカの大学院などと異なり、GREスコアも求められません。また、英語運用能力を示す公式証明書も任意での提出なので、あまりに酷い場合は提出せずにやり過ごすこともできますが面接でどのみちバレるので、潔く提出するのが良いかと思います。
CVは日本の履歴書とは異なり、自由に構成・記述することができます。短すぎるのも冗長なのも良くないですが、ネットで検索するCVはあまり綺麗でないものが多いのでぜひ留学生や留学している日本人学生に聞いてみましょう。
また、推薦状はPhDを持っている人でないと推薦者として認められないため注意が必要です。サイトの欄に各推薦者の名前や住所、メアドなどを書き込んで送信ボタンを押すと、推薦者に対して応募者の推薦状を提出するように指示するメールが届きます。推薦者に対しては予めこのシステムについて伝えておくと、迷惑フォルダに入ったメールを削除されたりスパムだとスルーされたりせずに済みます。
注意点
書類審査の合否は7月末には開示されますが、メールでは届きません。LSZGSのサイトのマイページを確認する必要がある。私はメールが届かない=不合格だと思い込み、7月末ギリギリになってから半ば諦めでマイページを見たところ、書類審査を通過して次のステップへの案内が来ていました。次のステップの締め切りもかなり近かったので、危うく落ちるところで心臓が止まりかけたものです…。マイページはこまめに確認してくださいね。
ラボ選択
書類審査通過連絡と同時に、オンライン面接を行いたいラボを選択します。
マイページ上でOpen positionと書かれた欄が選択可能になるのでそこをクリックすると、ポジションを公募しているラボが全プログラム表示される仕様です。ワードやプログラムごとの絞り込みも可能なので、それらを使って興味のあるラボを見つけていきます。
最大8つのラボを選択することができ、優先順位も指定します。この時、上位2つのラボは書類提出時に第一希望としたプログラムに所属するラボでないといけません。残りの最大6つはどこのプログラムのラボでも良いので、私も他の2つのプログラムのラボを選択しました。
この次のステップであるオンライン面接は、応募者とPI側の双方が行いたいという意思表示をして初めて開かれます。そのため、8つのラボを選んでもどこからも声がかからない場合、自動的な面接は組まれないという事態になる可能性もあるということです。
そうならないためにもPIとの事前のやり取りも必要になってきます。この時点からPIへの個別の質問やコンタクトが推奨されるため、自分が興味を持ったラボにメールを送り、ぜひオンライン面接へ進ませてほしいということをアピールしましょう。私の場合、結果的に応募した7つのラボのうち、4つからオンライン面接承諾のお知らせが来ました。
入学面接&ラボ面接 (オンライン)
入学面接とラボ面接はオンラインで行われました。これはコロナ禍であったことが強く影響していて、前年までは対面で行われていたようです。約5日間の行程のうち、初日はIntroduction & welcome party、2日目は入学面接で、3日目〜5日目がラボ面接でした。
初日のIntroduction & welcome partyではプログラム関係なく一同に集められて進行します。LSZGSがどういった機関であるかや特色について説明があったあと、質疑応答の時間が設けられます。面接に招待された参加者はゆうに100人を超え、面接やその後のプロセス、大学院に関することなどさまざまな質問が飛び交っていました。それらに対してプログラムコーディネーターが回答するという形でした。それが終わり次第、翌日の入学面接に備えてプログラムごとに接続確認をして終了です。
2日目はプログラムごとの入学面接です。それに合格したらラボ面接へ進むことができますが、すべての候補者を合格させるプログラムもあるようです。まずプログラムについての概要が説明されたあと、すぐに個別の面接に入ります。私が応募したプログラムでは、30分の面接で、現在の研究内容について15分間プレゼンしたあと、10分間の質疑応答、そして5分間の逆質問タイムがありました。教授は4人いて、候補者が発表した内容についてそれぞれが気になったことについて質問してきます。驚いたことに候補者は4人しかおらず、入学面接のトップバッターが自分だったことです笑 おそらく時差があったので早い順番にしてくれたのだと思います。
その日のうち(半日後)には面接の結果がきて、passしたかどうかが分かります。6点満点で点数もつけてくれますが、足切りの基準などは不明です。
3日目〜5日目の3日間はラボごとの面接でした。ラボ選択時に双方の合意が取れたラボと面接が組まれ、PIと1対1で面接します。与えられる時間は1時間ですが、話すことがなくなった場合は途中で終わることもありました。入学面接時にいた教授との面接はプレゼンをする必要はありませんが、そうでない場合は再び15分程度のプレゼンをすることになります。その後プレゼン内容に対する質問があった後、今度はPIの側から募集内容の研究について説明があり、それに対して質問をしたりラボについて聞いたりしました。逆質問の時間が長いため、論文を予め読んだり質問事項を考えたりして対策しておくことをお勧めします。
5日間の予定が終わると、対面でのラボ訪問(面接)をしたいラボを選択するように指示があります。ラボ側も対面で会いたい候補者を選択するので、このマッチングが成立すると対面面接に進むことができます。
私の場合は3つのラボに申し込み、1つのラボから対面面接の招待を受け取りました。
入学面接 Tips
入学面接は4人の教授 対 ひとりの候補者、という面接でした。少なくとも多対1の面接であることには違いないでしょう。入学面接で落とされてしまうとラボ面接に進めなくなるため、入念な面接対策が必要です。とはいえ、日本の修士課程の学生は学内で発表したり学会へ出席したりして自身の研究について話す機会が多いため、あまり苦にならないかと思います。異なるのは、英語で話す必要があるので英語ネイティブではない学生にとっては難易度が高くなることです。英語でのグラフ説明の表現や専門用語などを確認しておきましょう。
入学面接で実際に聞かれた質問内容は以下の通りです。
・研究内容の背景について
・研究手法が有効である理由
・他の研究手法について
・予想通りでなかった実験に関して、なぜなのか
ちなみに服装は私服で構いません。ガッツリした私服だと躊躇するという方はワイシャツなどを着ると良いと思います。教授たちも完全に私服です。
ラボ面接 Tips
ラボ面接では、フレンドリーな教授から厳し目の教授までいましたが、皆きちんと質問に対応してくれました。面接は本当に緊張しますが、教授たちからの研究内容に関する説明の機会やそれに対して質問する機会もあります。日本での就活のように、一方的に聞かれて答えるというシステムではないので、会話するように心がけました。
ラボ面接で実際に聞かれた質問内容は以下の通りです。
・(PIが)出版した論文の中で何が一番興味深かった?
・研究をしていて、嬉しかったことと辛かったことは?
・〇〇(研究内容で重要な物質)って知ってる?
・海外生活はしたことがある?どのくらいの長さ?
・研究にはどの程度の独立性を求める?
また、ラボによってはラボメンバーと候補者とのオンラインでのミーティングを開く場合もあります。その場合はPIに聞けなかったことを聞いたり、ラボの雰囲気を掴んだりできるので良い機会になります。
注意点
PIの先生たちはラボ面接が終わり次第すぐに、対面で面接したい学生の選別に入るそうです。そのため、アピールできるのはラボ面接の時間だけです (Farewell talkなどのパーティもありますが、1対1ではないため自分の業績や能力のアピールの場としては難しいでしょう)。怖じけずに自分の研究能力についてプレゼンや質問を通してアピールすることがとても重要だと感じました。
対面ラボ面接
対面での面接が行われることが決定したら、プログラムコーディネーターまたはPIと直接やりとりをして日程や行程を決めていきます。対面の面接に招待されればかなり受け入れの確率は高まっていますが、ここでもプレゼンをラボメンバーの前で行う必要があるなど気が抜けないことも確かです。
私の場合は、ラボメンバーの前での15分間のプレゼンとそれに対する質疑応答、そしてラボメンバーとの1対1での30分間の顔合わせを行いました。最後に1時間半あまり教授と公募の研究内容についてミーティングして終了でした。やはり実際に行って施設や設備、研究の様子などを知ることができたのは良かったと思っています。
注意点
対面での面接では英語力&会話力がどうしても必要になってきます。オンライン面接ではカンペを用意できることもありますが、対面ではそうもいきません。相手の話す内容を理解して自分の意見を返すだけの能力は必要になります。幸いなことにスイスは英語圏ではなく、PIも博士課程の学生も他国籍の場合が多いので英語はそれほど難しくはありません。相手のラボから受け入れてもらいやすいようなコミュニケーション力が大事でしょう。
また、手土産は持っていく必要があるか?という悩みもあるのですが、結論どちらでも良いと思います。手土産=賄賂と受け取られたら嫌だなあと思ったので、私は持っていきませんでした。しかしラボのメンバーに向けて、ということで多めの高価でない日本のお菓子を持っていくのもアリでしょう。
倍率
上述したとおり、LSZGSはさまざまなプログラムが集まっているので、実際には倍率の高いプログラムもあれば低いプログラムもあります。自分が応募したいプログラムの倍率を知ることが最も重要ですが、総計した倍率を見てみましょう。LSZGSが毎年出している報告書によると、2020年度(7/1締め切り)における応募者は1483人、そのうちラボのマッチングに成功するに至ったのは81人です。そのため倍率としては18.3倍になります。
詳しく見ると、書類提出者(1483人)→書類審査合格(183人)→面接候補者(147人)→ラボマッチ(81人)です。書類審査が最も難関で、その後の倍率は約2倍といったところでしょうか。
また、以下に各プログラムとそれぞれの倍率について記載しました。約38倍などという超難関もいれば約3.8倍のところもあり、その差は10倍以上です。どのプログラムを第一希望とするかによって結果が大きく変わる可能性もあるようです。
Biomedical Ethics and Law | Biomedicine | Biomolecular Structure and Mechanism | Cancer Biology | Clinical Science | Drug Discovery |
ー | 約12倍(7/83) | 約10倍(4/41) | 約16倍(12/189) | 約3.8倍(5/19) | ー |
Ecology | Epidemiology & Biostatistics | Evolutionary Biology | MD-PhD Program | Microbiology & Immunology | Molecular Life Sciences |
約38倍(1/38) | 約17倍(3/51) | 約19倍(1/19) | ー | 約12倍(13/155) | 約29倍(5/144) |
Neurosciences | Plant Science | RNA Biology | Science and Policy | Systems Biology | |
ー | 全員不合格 | 約11倍(1/11) | 約27倍(8/213) | 約12倍(6/58) |
また、世界各地の国籍の応募者が申請しており、ヨーロッパに近いアフリカや中東以外にも、東南アジアや南アジア圏からもアプライしています。このときの日本人応募者は3人だったようです。インド、中国、イタリアの順で応募者の国籍が多く、書類審査を合格しているのは英語圏の国やヨーロッパ圏の国籍の人である印象でした。
合格の確率を上げるために
今思い返しても、なぜ自分が合格したか不思議で仕方がない面もありますが、良かったこと&逆に自分に足りなかったことを挙げていきたいと思います。
<良かったこと>
・提出書類の推敲
書類は非常に重要です。この審査に通過しないと次の面接に進めません。日本では就職活動などで書類審査に合格しても面接がいくつもありそこで落とされることが多いですが、海外では書類審査の重みが大きいです(ただ大学院などに関しては日本でも面接より書類やテストの比重が大きいです)。今までの研究内容、motivationを示す文章やCVなどは何度も推敲して色々な人に見てもらいました。最終的にはversion8,9くらいにはなっていましたね。研究室の人だけでなく、別の分野での修士/博士課程の学生に見てもらってわかりやすい表現に変えたり、言い回しを工夫したりしたことも大事だったと思います。
・学士/修士での優秀な成績および証明書
農学部の採点甘々の学科であったことが幸いし、学部で平均GPA 3.6/4.0というそれなりに高いGPAを持っていたこと、そして修士でも同様のGPAを獲得していたことは有力だったのではないかと思います。ヨーロッパの修士課程の学生で論文を持っている人はほとんどいないはずなので、比較できるのは成績くらいでしょう。その中で見劣りしない成績であったことや紛いなりにも成績優秀者として表彰されたことがプラスに働いたと思われます。
・推薦状
最低2枚の推薦状が必要でしたが、最終的には3枚の推薦状を書いていただきました。1枚は私の指導教官、2枚目は専攻しているコースのメンターの先生、3枚目は大学内のプログラムでお世話になった他分野の教授でした。指導教官には研究について、メンターの先生には学業成績について、そして学内プログラムでの先生にはチームワークやリーダーシップについて書いていただきました。大した成果もなくむしろご迷惑をおかけしてばかりの私に、盛りに盛った推薦状を書いてくださった指導教官には頭が上がりません….。指導教官以外の先生方には自分で下書きをした推薦状をお渡しして、修正を入れて返していただきました。別々の角度から複数人の先生に自分の長所を書いていただいたことは良かったと思います。
・面接でのスライド作り
面接では修士での研究内容を15分間発表する必要がありました。その際にスライドを見せるのですが、これをかなり作り込んだことで落ち着いて対応することができました。書類同様、スライドに関しても色々な人に見てもらってアドバイスをもらいました。想定質問集を作って、それに対応できるように+αのスライドを作っておくことは好印象につながるのではないかと思います。
・研究以外に関する質問の想定と練習
面接では研究内容だけではなく、研究姿勢や強み/弱みについても聞かれました。これらの質問も想定質問を考え、ランダムに友人たちに聞いてもらい答えるという練習を積んで準備しました。私は日本語での面接もかなり苦手だと認識していたので、何度もぶつぶつ唱えながら、丸暗記ではなく表現を覚えてサッと頭の中から取り出せるように練習しました。結果として、大崩壊した面接もありましたがうまくいった面接もあったので練習しないよりは圧倒的にマシだったと感じています。
<自分に足りなかったこと>
・今の研究分野との類似性
ものすごーーーーく当たり前のことなのですが、現在の研究との類似性がないと厳しいです。分野を変えたい!と思っても茨の道です。PIたちも当然、自分の研究分野に関する訓練や知識を積んできた学生を取りたがります。私が受けた大学院のように公募型のプロセスでは、1つの研究室に複数人の応募者が集まるので当然PI側が研究室に適した人材を採用します。私は農学部出身で研究室は分子生物学や生化学を行っていますが、博士課程では人の健康に関わる研究分野に進みたいと思っていました。しかし、医学部、薬学部、理学部出身の学生に比べて見劣りすることは間違いなく、PI側からもモチベーションをかなり聞かれました。運良く理学系で疾患に関わる研究を行っている研究室に内定をいただきましたが、なかなか綱渡りでした。
・学部〜修士での論文(業績)
結局書類審査は通過したので良かったのですが、正直論文業績があったらヒヤヒヤしなくて済んだだろうなと思います。既に2~3年は研究をやっているはずなので論文の1報はあってもおかしくないです。国際誌にファーストオーサーで投稿できていれば一番よく、ついでに共著の欄もあったのでせめてそこだけでも書けていれば良かったと思います。
・面接での逆質問
質疑応答に関しては入念に準備した私ですが、逆質問の時間が10分もあることを全く想定していませんでした。結果として、"あ…うぁ…."と沈黙する時間ができてしまい真っ青になりました。採用プロセスでもいいですし、大学院のこと、入学時期についてでもいいので何か用意しておくことが必要です。
・英語能力
英語運用能力は高いほど良いです。特にListeningとSpeaking!ReadingやWritingは正直、時間をかければできますし優秀な翻訳機能や文章修正機能があるので問題ないのです。しかし、コミュニケーションの基本である「聞く&話す」の能力は絶対に必要です。書類審査当時の私の英語力は、IELTSでListening 6.0、Reading 7.5、Writing 6.0、Speaking 5.5という酷いものでした。英語能力についてはアメリカやイギリスなどの英語圏の大学院とは異なり、厳しくは見られません。それでもさすがに問題のあるスコアです…。オンライン面接と対面面接の間になぜか突如話せるようになり、かなり謎だったのですが本当にListeningとSpeakingは必須です。
いかがでしょうか?結局のところ、いろいろな人の手を借りて後押ししてもらうことで、超凡人でも海外大学院からの内定をいただくことができたのだと思います。
実際の体験記はブログに記述しました:対面面接
皆さんももし興味がありましたら、ぜひ海外大学院も視野に入れてみてくださいね。
それでは!