海外大学院への進学を決断した話(前編)

2022年3月3日

博士課程に進むか、就職するかでこれ以上ないほど悩んでいた時の話

こんにちは、管理人のおもちです。
今回は私が海外大学院に進学するまでのM1の秋〜M2の夏頃までの話を書こうと思います。進路に悩みに悩み、五里霧中の時を過ごした時期の話ですので、同じように進路に悩んでいる方にとって何か意味のあるものになれば幸いです。

就職か?博士課程への進学か?

日本での就職か、日本での博士課程進学か、海外大学院への進学か。
これらが私の持っていた選択肢の全てでした。王道ルートは修士卒の企業勤め、特に修士号を活かすのであれば研究職でしょう。そして次にあり得そうで、実際茨の道だとよく聞いていたのは日本での博士課程進学。そして近場に情報がほとんどなく、未知ではあるものの惹かれていたのが海外での博士課程進学でした。
私は修士で海外大学院に進学しようとしていたのですが、諸事情により断念していた経緯がありました。そのため、M1の春頃には修士での海外大学院進学を諦める代わり(代わりってなんだという話ですが)、博士課程で海外へ行きたいとふんわり考えていたのです。修士での海外大学院についてはこちら

さて突然なのですが、博士課程進学についてしっかりと考えたことはあるでしょうか。
ここで言う"しっかりと"というのは、メリットデメリットを挙げるという外的な評価に加えて、自己分析や他者からの認識、自分が歩みたいキャリアへの理解などの内省的な評価をしているかどうかということです。
思うに、博士課程への進学についてその良し悪しを語る場やサイトはかなり多くあるのですが、自分がどういった特徴を持っており、それがどういった場面で活かされ、何を達成することに役立つのか。そしてそれらがどうして博士課程への進学へとつながるのか、について深く考慮して博士課程進学を決めたという話をあまり見たことがありません。自己認識や適性の理解を行う場が、なぜ就活だけに限定されるのでしょうか。就活でよく行われる自己分析などは、就活で必要なモノ、というよりも自分の進路について自分で舵をとるための羅針盤にするために必要なのだと思います。

説教くさい話をなぜか最初に持ってきてしまったなあという感じですが、上記の話は私がM2の5月になってようやく痛感した教訓でした。自分の軸のない人間が、何かを選べると思わない方がいい。なぜなら日本の高等教育を受けて大学を卒業するに至った人間は、大概の選択肢が視野に入るだけの能力があるからです。そして星の数ほどある選択肢の中から、自分がまず所属するのはたった1つだからです。適性が云々などと言っても、基本的に能力のある人間はほぼ何でもできます。ではその中から自分で舵をとって"選んだ"と言うためには、徹底的な自己認識が必須なのです。

ちなみにこれ、感覚的に自分が"すぐにわかる"人間と理詰めで考えていった先に"ようやくわかる"人間とで結構分かれると思います。少なくとも私は後者で、とにかく自己認識に時間がかかりました。この自己認識についてはまた別に記事として書いていくつもりです。

就活に目を向け始めたM1の秋

前置きが長くなりましたが、M1の私がどうしようもなく自分というものを疎かにし、深く分析しようともしていなかったということをわかっていただければ良いと思います。それなのに博士課程を海外でやりたーい☆とか本当、愚かというか無邪気というか…。ちなみにこの頃、(学内では上位層とはいえ)英語も流暢とは程遠いものでした。

そうとはいえ、海外への博士進学がそんなに易しいものではないことはさすがにわかっていました。なので保険として一応見ておくかなー程度の発想で、就活にも目を向け始めました。それがM1の11月ごろです。ご存知でしょうが修士での日本の就活はM1の夏前には始まります。人気企業は夏インターンから始まることもあり、その次が秋インターン、冬インターンときて4月ごろから就活が本格化して7月には落ち着く、といったスケジュールです。M1の初冬から就活に片足突っ込み始めるのは本気で就職したいならば遅すぎますし、就活しないならしないで研究しろという話になります。何度も言いますが、中途半端になるのは自己認識とキャリア観がクソ甘だからです。

緩く始めた就活で、私が見ていたのは精密機械・医療機器メーカーの営業職でした。というのも、私自身が「卓越した技術」が大好きで、それを作る人に大きな敬意を持っていてその技術を用いた製品を必要とする人に提案したい、という想いを持っていたからです。金融や不動産には全く心を動かされずサービス業にもあまり興味がなく、心が動いたのがこの業界、という感じでしたが、自己認識が済んだ今となってもこれは悪くない選択だなあと思います。実際、ある企業の冬インターンに参加させてもらった際には営業職のロールプレイングなどを行なって、これは面白い…!と感じ、なんかもうここで働けたらもうそれで良いかも、くらいに思っていました。最終的には思ってもみなかった早期選考にのっかり、2月末に面談(という名の面接)が行われたのです。しかしここであえなく撃沈。ろくに面接練習をしてこなかった&生来の面接苦手のせいで、一問一答形式の面接に全く対応できませんでした。あらまあと思っていたところ、ある金属加工メーカーからは3月上旬に内定をいただきました。どうしたものかな…と悩み始めたのはその頃からでした。

本格化する就活と迷走の春

本当に繰り返しますが、自分の軸がない人間というのは移ろいます。数ある選択肢の中から何を絞れば良いのかもわかっていないので当然です。ふわっと次に考えたのは企業の研究職ってどんな感じかなあ、ということでした。農学系はどうやら食品に行くようだぞ、ということで、食品会社のHPをみてみました。確かに面白そう…!

しかし結局のところ就活は片足を突っ込んでいるだけ。そんな状態なので大手数社を見比べて、ここ良いなあと思うところのESを出してあとは全スルーというだらしなさを発揮します。業界最大手といっても過言ではない企業に出して終わりとはなんということでしょう、という感じですが何も考えていない人間はマジでそうします。何も考えてないので楽観的です。通過率3割といわれるESが通り、20分×2という初めてみるタイプの1次面接も通り、あれ、これはいける?となりました。選考過程もかなり早かったため4月下旬には2次面接、最終面接が行われる予定でした。しかしその2次面接。グループ面接でのもう一人の学生が完璧な受け答えを見せる中で緊張し、自分が何を言っているのかもわからないまま面接が終了しました。結果は当然不採用。とても良い企業だったため、もっと準備すればよかった、と落ち込みました。(ただこれも本質的な問題点は事前準備ではないです)

人間不思議なもので、片足だけを突っ込んでいたはずの就活に、気づけば両足まで浸っていました。いやもしかするとこの時点ではもう、腰まで嵌っていたのかもしれません。4月末に2次面接があってから慌てて他の企業を探しましたが、めぼしい企業はすでにES締め切り後。特に競争率の激しい食品業界では尚更です。
…これは本当にどうしよう。
PCを開いて検索するたび、スマホで就活アプリを開くたびに気持ちがどんどん沈んでいきました。焦る気持ちと、無情にも過ぎていく時間。進路選択の迷路に奥深くまで入り込んでいたことにようやく気が付き、なんの指針も持たないまま呆然としてM2の春は終わりました。

海外大学院への進学を決断した話(後編)